【解説】婚前契約・婚後契約を利用しないと損をする? 【ひな型DL可能】

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目次

婚前契約とは

婚前契約(こんぜんけいやく)とは、結婚する前に締結する契約で、主に結婚後の財産の分配や離婚時の条件などについて取り決めるものです。具体的には、結婚生活中の財産の管理や、離婚時における財産分割、扶養義務などについての合意を事前に定めることができます。

婚前契約は、プリナップ(Prenup)ともいわれて、欧米では一般的な契約の一つです。

日本では、著名人・芸能人が婚前契約を締結すると話題になることがありますが、婚前契約書を締結することはまだまだ一般的とはいえません。

日本の著名人・芸能人が婚前契約書を締結したことが報道されたニュースは、例えばこんなものがあります。

大リーグでは常識…!大谷翔平夫妻「婚前契約書」の気になる中身【弁護士が分析】
https://gendai.media/articles/-/126163

「契約書を作ると、結婚生活の感動が増す」飲酒、セックスも取り決めたSILVAの結婚観
https://r25.jp/articles/928885293156335618

深田恭子の婚前契約に賛否 タレント生命を守るために必要か
https://www.news-postseven.com/archives/20191112_1485858.html

アンミカ、夫と交わした婚前契約の内容を明かす「初めはそれが勿体無くて」
https://times.abema.tv/articles/-/10062322

遠野なぎこ 破局原因の婚前契約書公開 千秋「これ、ネタでしょ!?」
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/02/07/kiji/K20140207007537300.html

元SDN48・光上せあらが「婚前契約書」の存在明かす
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/194056

ただ、10年前と比較すれば、著名人・芸能人以外の方でも、婚前契約を締結する数は確実に増えています。

婚前契約を結ぶことで、将来的なトラブルを防ぎ、互いの期待や責任を明確にすることができます。特に、双方の財産状況が異なる場合や、ビジネスオーナー、富裕層など特別な事情がある場合に有効です。法律的な効力を持つため、内容を確実にするためには、専門の弁護士に相談することが推奨されます。

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婚後契約がこれから増える可能性

また、婚前契約の普及が進まなかった原因の一つとして、婚前契約は、結婚前に締結する必要があったことがあります。結婚する前に、婚前契約という契約があることを知っている夫婦は、かなり少ないので、婚前契約の存在を知ったときには、既に結婚していて、婚前契約を結ぶ時期を逃したという夫婦も多いのではないでしょうか。

結婚後に、婚前契約と同じ内容の契約(いわゆる「婚後契約」)を締結することはできます。ただ、結婚後は、夫婦間の契約は取り消すことが可能です(民法754条)。そうなると、一方が婚後契約の違反を主張しようとすると、相手から婚後契約の取消しを主張されてしまい、婚後契約の違反の責任を問うことができなくなってしまいます。

(夫婦間の契約の取消権)
第七百五十四条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

しかし、2024年の民法改正により、夫婦間の契約の取消しができる民法754条が廃止されることが決まりました。

2024年の改正民法は、2026年5月までに施行されます。改正民法の施行後は、結婚するまでに婚前契約書を締結しなかった夫婦が、婚後契約書を締結するメリットが出てくる(婚後契約書を締結しても、一方的に婚後契約書の取消しをされることがなくなる)ので、婚後契約書の締結が増えるのではないかと思われます。

結婚契約、婚前契約、夫婦財産契約、婚後契約の関係は?

結婚契約、婚前契約、夫婦財産契約、婚後契約といった用語がありますので、整理をしたのが上記の図となります。

まず、結婚中の約束事を決める契約が、(広義の)結婚契約となります。

そして、結婚前に契約するものが婚前契約であり、結婚後に契約したものが婚後契約となります。

婚前契約のうち、民法が定める夫婦間の財産に関する取り決め(法定財産制)とは異なる合意をするものが夫婦財産契約となります。民法が定める法定財産制とは異なる取決めをした場合は、夫婦財産契約の内容を登記すれば、第三者に対抗できます。もちろん、登記をしなくても、夫婦の間では夫婦財産契約の効力はあります。

【法定財産制の内容】

  • 夫婦は、婚姻費用を分担すること(民法760条)
  • 日常家事債務については夫婦が連帯責任を負うこと(民法761条)
  • 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とすること、夫婦のいずれかに属するか不明な財産は夫婦の共有のものとすること(民法762条、夫婦別産制)

登記までしている夫婦財産契約の件数は年間二桁前半ですが、登記をしなくても夫婦財産契約を締結している数(特に、富裕層や事業オーナーの夫婦)は、確実に増えているのではないかと思われます。

2026年5月までに夫婦の契約取消権を定めた民法754条が廃止されますので、婚前契約を締結することができなかった夫婦の間で、婚後契約の締結をすることが増えてくるのではないでしょうか。

なお、改正民法が施行された後でも、民法が定める法定財産制とは異なる夫婦財産契約を締結する場合は、婚姻までにする必要があります。また、登記をしなければ、第三者には対抗できないことについては変更はありませんので、注意が必要です。

2023年2022年2021年2020年
総数23392123
登記23392123
e-stat 政府統計の総合窓口

婚前契約を締結するメリット

結婚される二人のステージやお立場によって、婚前契約を締結するメリットは変わってきます。

結婚する人全員に共通するメリット

①結婚前の価値観のすり合わせができる
 夫婦の価値観の違いがあるのは当然ですが、結婚した後も、価値観の違いをすりあわせることができず、幸せな結婚生活を送れない夫婦がおられます。結婚前に、婚姻契約の内容(例えば、家事や育児の分担、趣味の扱い、お金の使い方等)を話し合って、一定のルールを合意することで、結婚後のトラブルを少なくすることが期待できます。

②離婚の際の財産分与のルールを事前に決めることができる
 離婚をしたときには、結婚時代に築いた財産(共有財産)は、財産分与として1/2ずつ分けることが原則となります。
 しかし、結婚する時点で、夫婦の片方が相当高額な資産を保有していた場合(特有財産)は、財産分与の対象とはなります。
 ただ、結婚期間が長い場合、特有財産と共有財産が混在してしまうことがありがちです。
 そこで、婚前契約によって、結婚する際に、夫婦の片方が保有している特有財産を明確に特定し、共有財産との峻別を図ることで、離婚時の財産分与のルールを明確化できるメリットがあります。

③結婚後の浮気の防止(抑止)
 夫婦間では、夫婦はお互いに貞操義務があり、結婚している間に不貞をすることは民法上の違法行為です。
 そこで、婚前契約によって、浮気(不貞行為)をしないことを文章として記載したり、浮気(不貞行為)をした場合の慰籍料の金額を記載することで、結婚後の不貞行為を抑止する可能性をあげられるというメリットがあります。
 もちろん、不貞による離婚の際に裁判所が認める離婚慰謝料の相場(100万円~300万円)を大幅に超える慰籍料を婚前契約で定めた場合、慰籍料の金額が不当に高額すぎるということで裁判になると婚前契約の慰籍料金額が無効になることもあります。
 ただ、不貞をした当事者がすべて裁判をしてくるわけではありませんので(例えば、不貞慰籍料を400万円とした場合、弁護士費用をかけてまで裁判をして争うかどうかは悩ましいところです)、婚前契約における不貞行為の慰籍料の定めは一定の抑止効果がある場合が多いでしょう。

④約束した内容が証拠として残る
 婚前契約書を締結することで、二人が約束した内容が証拠(書面)として残ることになります。
 口頭の約束では、後日「言った」「言わない」問題が発生しがちです。婚前契約書を締結しておけば、「言った」「言わない」問題の発生は防げますし、約束内容を守るという意識も、口約束の場合よりも、高まるでしょう。
 

富裕層・事業オーナーが結婚する場合のメリット

結婚した後に、事業で成功して財産を築いた場合は、離婚した場合の財産分与で、財産を平等(または2分の1ルールに、寄与度に応じた修正を加えて)分けることは合理的といえます。

他方、結婚する前の時点で、既に事業に成功して財産を築いていた場合や、相続により相当な財産を取得した後に結婚し、その後に離婚した場合の財産分与で、財産を平等に分けるのは、合理的ではないといえます。この場合に、婚前契約を締結することでで、結婚前の財産について特有財産として明確に定めることで、離婚の際の財産分与の対象から外しやすくするというメリットがあります。

ただし、婚前契約で特有財産を定めたとしても、結婚後の運用で、特有財産と結婚後に築いた財産が混ざってしまうと、特有財産性が損なわれるリスクがあるので、注意が必要となります。

スタートアップ創業者が結婚する場合のメリット

結婚後に創業した場合では、創業者が保有する自社株が財産分与の対象となります。会社が成長した場合は、自社株の価値は相当高額となりますが、離婚した際は、(貢献度合いの論点はあるにせよ)自社株の2分の1(またはそれ以下の比率になることもありますが)が財産分与の対象となるのが原則です。

投資家との間の投資契約においても、離婚したからといって財産分与で元配偶者に自社株を財産分与することについて容認する条項は通常はありません。また、創業者と離婚した元配偶者が、大株主となると、会社の経営上非常に問題となります。

しかし、会社が上場している場合でなければ、自社株換金することは現実的に困難ですので、自社株の財産分与する代わりに、相当額の現金を渡すことも、かなりハードルが高いことが通常です。

そこで、婚前契約・婚後契約において、創業者の保有する自社株について、離婚時に財産分与する場合について、
 ①評価対象
 ②評価方法
 ③自社株ではなく、現金で財産分与すること
 ④現金での財産分与については、一定期間の分割払いとすること
等を合意しておくと、自社株の財産分与を避けつつ、キャッシュがない中で現実的な金額を分割払いすることが可能となります。

法定財産制と異なる合意(例えば、創業者の保有する株式を特有財産として財産分与の対象から外す場合)は、結婚前に、夫婦財産契約という形式で行う必要がありますので、ご注意ください。

ただし、この合意もやりすぎると、婚前契約・婚後契約の条項が公序良俗違反で無効として訴訟をされ、無効判決が出てしまうリスクがあります。例えば、創業者のあらゆる資産を特有財産とする夫婦財産契約を結んで財産分与対象財産を著しく減少させたり、財産分与の清算金の支払いを20年分割払いにしたり、民法の財産分与の趣旨を著しく逸脱した内容などです。

もちろん、無効になる可能性が高い場合であっても、交渉の材料(婚前契約・婚後契約より、譲歩した内容で最終和解する場合)として使うことはできる場合があるかと思います。

国際結婚や事実婚の場合に、婚前契約・婚後契約はおすすめ

国際結婚や事実婚(内縁関係)を選択する場合に、婚前契約・婚後契約はお勧めです。

国際結婚の場合は、育ってきた文化、風習、人種や宗教等が全く異なる国で育った二人が結婚することになります。夫婦間や価値観も大きく異なります。婚前契約・婚後契約の内容について話し合っていく中で、お互いの価値観を確認し、歩み寄れる部分をすり合わせることが期待できます。

事実婚(内縁関係)は、婚姻に準ずる関係として、一定の範囲で法的な保護を受けます。事実婚(内縁関係)の場合は、財産分与が認められ、財産分与の割合も法律婚の場合と同じ、原則2分の1とされています。

ですので、富裕層・資産家の方が事実婚(内縁関係)を選択する場合や、スタートアップ経営者が事実婚状態である場合に、別れた場合の財産分与について、婚前契約・婚後契約により対策を講じる必要があることは、法律婚の場合と変わりません。

婚前契約を締結するデメリット

①感情的な負担:
 婚前契約の話題は結婚前のカップルにとってデリケートであり、特に相手が契約を提案すると、信頼関係や愛情が疑われると感じることがあります。これにより、結婚前の関係が悪化するリスクや、場合によっては結婚が破断するリスクがあります。

②柔軟性の欠如:
 婚前契約は結婚当初の状況を反映することになりますが、人生の変化に対応しにくい場合があります。例えば、将来の収入や財産状況が予想外に変化した場合、契約内容が不適切になることがあります。

③不公平な合意:
 婚前契約を作成する際、一方が経済的に優位な立場にあると、不公平な条件が盛り込まれる可能性があります。特に、圧力を感じて契約に同意した場合、後に問題になることがあります。

④コスト
 法的に有効な婚前契約を作成するには弁護士の助言が必要であり、これには費用がかかります。特に複雑な契約の場合、費用が増大する可能性があります。

婚前契約・婚後契約を作成する際の注意点

締結後は、相手の同意がないと変更できない

婚前契約・婚後契約も、「契約」である以上、契約を締結した後は、相手方の同意がなければ、変更できません。ですので、契約内容については事前によく話し合ってから、契約するようにするべきです。

例えば、
 ①自分や相手方にとって過度な負担となる義務が盛り込まれている場合
 ②将来の変化(例えば、仕事が忙しくなった場合や、転職、子供の出産・子育て等)を考えた場合でも守ることができる内容かどうか、または、将来の変化があった場合に婚前契約・婚後契約の内容を変更できる条項があるか

等について、婚前契約・婚後契約に盛り込まれているかは、締結前にじっくり吟味すべきです。特に、一方当事者に守れないような過度な負担となる義務が盛り込まれていると、婚前契約・婚後契約が夫婦生活に悪影響を及ぼすこととなりかねず、本末転倒となります。

婚前契約・婚後契約の内容が、夫婦の双方にとって合理的なものであり、夫婦生活を長く共にする上でお互いが守ることができるような現実的なものになっているかどうかについては、専門的な知見を持っている弁護士に相談をされることをお勧めします。

婚前契約・婚後契約を変更する場合の手続

夫婦双方の合意により、婚前契約・婚後契約の内容を一部変更する場合にも、契約書の変更の手続を踏む必要があります。具体的には、
 ①訂正すべき表現を二本線で消す
 ②夫婦双方の訂正印を押す
 ③訂正後の表現を記載する
 ④「○字削除○字加入」と記載する
といった手続をする必要があります。上記の手続をとらずに、単純に、調印済みの契約書文章を修正しただけでは、婚前契約・婚後契約を変更したという「証拠」にはなりません。

締結しても、どこまでの法的効力を持たせられるかは内容次第

婚前契約・婚後契約は、契約ですので、契約を締結した夫婦の間では有効な契約で、お互いは契約を守る法的義務があります。

ただ、夫婦の一方が婚前契約・婚後契約に違反した場合に、どこまでの法的効力を持たせられるかは、婚前契約・婚後契約の条項と定め方次第です。

例えば、婚前契約で公序良俗に反する契約条項(例えば、浮気をした場合に1億円の慰籍料を払う等という条項)は、違反した当事者が不服があるとして裁判に持ち込むと無効になる可能性が非常に高いです。もちろん、浮気をした当事者は一定の慰籍料の支払いを判決で命じられることになりますが、いわゆる裁判の相場の範囲(100万~250万)での慰籍料となります。

また、公序良俗に反しない契約条項(例えば、家事の負担を具体的に定めた場合)であっても、違反した場合に、相手方に裁判をしたとしても強制することが難しい場合があります。そもそも、婚姻を継続しながら、家事分担義務違反を理由に裁判をすること自体が、現実的ではないですし、費用対効果にも合わないことが多いかと思います。

もちろん、婚前契約・婚後契約で明確に定めておけば、裁判所でも通用する契約条項(例えば、結婚前から保有していた特有財産については、離婚をした際の財産分与の対象外とする内容)もあります。

ですので、婚前契約・婚後契約を締結する場合は、契約条項によって、どこまでの法的効力を付与できるか(例えば、当事者の間の合意としての効力、裁判所でも通用する効力)や、違反時に相手方に強制できるかはケースバイケースですので(裁判例の集積もほとんどなく、予測可能性が低いのが実情です)、どこまでの「効果」を期待して契約を締結するのかについて、専門的な知見を持っている弁護士に相談をされることをお勧めしs

法的に有効かどうかの「次元」の違い

婚前契約・婚後契約が法的に有効かどうかという議論は、どういう次元で議論しているのかを意識しないと、意味がありません。

例えば、整理するとこのようになります。

  • 婚前契約・婚後契約が法的に「無効」な場合、「無効」である可能性が高い場合
     ⅰ 訴訟をしなくても、「無効」であることが明らかな場合(例えば、裁判例あり)
     ⅱ 訴訟をしないと、「無効」であるかどうかは明らかではない場合(例えば、裁判例がない)
         →この場合でも、交渉(例えば、協議離婚)で使える材料にはなります。
  • 婚前契約・婚後契約が法的に「有効」である場合
     ⅰ 相手が婚前契約・婚後契約の不履行をした場合に、訴訟をして判決をとれば強制執行ができる場合
     ⅱ 相手が婚前契約・婚後契約の不履行をした場合に、訴訟をして判決をとって強制執行ができない場合
         →この場合でも、夫婦間のルール(※1)や、離婚の際の交渉で使える材料にはなります。

婚前契約・婚後契約が法的に「有効」とか「無効」であるという議論をする場合は、上記のどの次元で議論をしているのかを意識しないと、議論が混乱しがちですので、ご留意ください。

(※1)例えば、①家事や育児の役割分担、②お互いの親族との関係性について、例えば「料理は妻が担当し、諸君後の後片付けは夫が担当する」や「毎年お盆には家族全員で夫の実家に帰省する」といった内容を婚前契約・婚後契約で定めることができます。
 しかし、このような内容は法的に強制することはできないので、相手が違反したとしても、訴訟して判決をとって強制執行することはできません。
 ただ、婚前契約・婚後契約で定めることによって、夫婦の間のルール(規範)として事実上機能することが期待できます。

無効になりやすい婚前契約・婚後契約の条項

公序良俗違反として、無効になりやすい婚前契約・婚後契約の条項としては下記のようなものがあります。

・離婚原因を定めた民法第770条第1項各号よりも、離婚しやすくなる条項
  →例えば、一方当事者が一方的に離婚をすることができる条項、1年別居すれば離婚をすることができる条項は、民法770条第1項に違反するので、無効となる可能性が高いです。

・離婚原因を定めた民法第770条第1項各号よりも、離婚しにくくなる条項
  →例えば、一方当事者が不貞行為をしても、(他方が許していないのに)離婚できないとする条項は、民法770条第1項に違反するので、無効となる可能性が高いです。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

・著しく高額な慰謝料を定める条項
  →例えば、不貞行為をしたら1億円支払うという条項は、公序良俗に反するので無効となる可能性が高いです。

・財産分与の内容が著しく不平等な条項

・夫婦の同居義務、夫婦の扶助義務に反する条項
  →例えば、結婚しても同居しないといった条項や、夫婦の一方またはお互いが生活費を一切負担しないといった条項は、民法の定める同居義務・扶助義務に反するので無効となる可能性が高いです。

婚前契約・婚後契約のパターン

婚前契約・婚後契約のパターンとしては、主に下記の3パターンが考えられます。

離婚時対応メイン型

離婚した際の慰籍料、財産分与、特有財産の扱い、養育費の金額を中心に定める婚前契約・婚後契約のパターンです。スタートアップ企業の創業者夫婦や、夫婦の一方が経営者・資産家の場合に、結ばれることが多いです。このパターンの場合は、締結した後は、婚前契約・婚後契約は、内容の変更を予定していないので、法的な安定性が求められることが多く、専門家の弁護士を活用されることをお勧めします。

結婚中のルール型

結婚中の夫婦間のルール(お互いの尊重、家事の分担等)を中心に定める婚前契約・婚後契約のパターンです。結婚する前に、お互いの結婚観をすりあわせる際に、婚前契約・婚後契約を利用するとよいかもしれません。このパターンの場合は、締結した後も、ライフステージの変化によって、双方の合意により内容を変更していくことが多いかと思います。

フルパッケージ型

離婚時対応メイン型と結婚中のルール型をフルパッケージにしたものです。

婚前契約・婚後契約で何を定めるべきか、定めないべきか

はじめに

婚前契約・婚後契約の内容をどこまで定めるかは、カップル・夫婦の方によって様々です。

また、婚前契約・婚後契約を締結する目的や、法的有効性をどこまで要求するのか(道義的な効力でかまわないのか、裁判になっても無効にならないレベルの効力が必要なのか、強制執行まで考える必要があるのか等)によって、婚前契約・婚後契約で定めるべき内容や表現が変わってきたり、かけるべきコスト(弁護士によるレビューの費用)も変わってきます。

以下は、婚前契約・婚後契約において定めることが多い一般的な項目や表現について、解説をします。ただ、裁判レベル(例えば、離婚訴訟)での法的有効性や強制執行までを想定したものではありませんので、ご留意ください。裁判レベルでの法的有効性まで考える必要がある場合は、必ず弁護士に相談してください。

03-3263-7278

結婚の目的・精神


第●条(夫婦間の愛情・信頼)
甲と乙は、結婚生活において互いに信頼し、愛し、思いやりを持って接し、支え合い、そして互いの価値観と意見を尊重することを誓います。


第●条(意思決定の共有)
甲と乙は、家庭や仕事に関する重要な事項を独断で決定せず、常に報告と相談を行い、お互いが納得できるまで協議し、相互の合意をもとに意思決定を行うものとします。

第●条(夫婦間のコミュニケーション)
甲と乙は、どのような状況でも誠意を持って向き合い、互いの意見を尊重し、相手の話に真摯に耳を傾け、建設的な対話を行うものとします。


第●条(共通の目標と努力)

甲と乙は、互いの仕事がより良く遂行できるよう協力し合い、各自の成長と成功を目指して努力を惜しまないものとします。

婚姻前の財産の扱い

第●条(特有財産)
1 甲及び乙は、次の各号に定める財産が各自の特有財産であることを相互に確認します。
(1)婚姻日前の財産      :婚姻日の前日までに各自が保有していた財産
(2)婚姻中に取得した相続財産 :婚姻中に発生した相続により取得した財産(ただし、甲及び乙の子の相続の場合は除く)
(3)婚姻中に贈与を受けた財産 :婚姻中に受けた贈与により取得した財産(ただし、甲及び乙の子から贈与を受けた場合は除く)
(4)特有財産から生じた果実  :特有財産から生じた果実(賃料、利息、配当金、分配金等の一切)
(5)特有財産を担保にした借入により取得した財産 
2 甲及び乙は、特有財産については、甲及び乙が離婚した場合の財産分与の対象にならないことを相互に確認します。

婚姻中の財産/収入の扱い

・共有財産の定義

第●条(共有財産)
甲と乙は、甲と乙が婚姻した日から、次の各号に定める日のうちのいずれか早く到来する日までの間に取得・形成した甲名義・乙名義の財産(ただし、特有財産は除く)を甲及び乙の共有財産とします。
(1)離婚した日
(2)甲及び乙が別居した日(家庭内別居は除く)。ただし、甲又は乙のいずれかの仕事の事情、または、甲及び乙の合意に基づく別居の場合は除きます。

・お互いの収入の報告義務の有無

第●条(収入の報告)
1 甲と乙は、定期的に、互いに自身の収入を報告し合うものとします。
2 甲と乙は、自身の収入の増減が予測されるときは、事前に互いに報告し合うものとします。
3 甲と乙は、賞与等の臨時収入があった場合には、その内容を互いに報告するものとします。
4 甲と乙は、個人使用目的に関わらず、●万円以上の物品・サービスを購入する際には、事前に互いに協議するものとします。

婚姻中の婚姻費用(生活費)の負担

・婚姻費用の定義

第●条(婚姻費用の定義)
婚姻費用とは、結婚生活を維持するために必要な費用のことをいい、具体的には、次の各号に定める費用を含むものとします。

(1)住宅費:家賃や住宅ローン
(2)光熱費:電気、ガス、水道などの費用
(3)食費:家庭での食事、外食にかかる費用
(4)医療費:健康維持のための医療費
(5)教育費:子どもがいる場合、教育にかかる費用
(6)交通費:通勤や通学にかかる費用
(7)車両費:結婚生活で使用する車両の購入・維持費用
(8)保険料:健康保険、生命保険、損害保険などの保険料
(9)その他、甲乙が合意した費用

・家計口座への収入の組み入れ金額のルール

・家計口座の管理者をどちらにするか

・家計口座に組入れなかった収入の扱い

第●条(家計口座)
1 婚姻費用は、下記の口座(以下「家計口座」)から支出するものとします。
   ●●銀行●●支店 (普)●  
2 家計口座の管理は、甲が行うものとします。
3 甲と乙は、家計口座のネットバンクのID・パスワードを共有するものとします。
4 甲及び乙は、給与、役員報酬、業務委託料その他の収入(以下「給与等」)が入金される口座(以下「給与等振込口座」)に給与等が入金された場合は、毎月末までに、給与等振込口座から家計口座に当月の給与等から次の各号に定める金額の合計額を控除した金額(以下「プール金」)を送金するものとします。ただし、当月の婚姻費用の金額が増加して、次の各号に定める控除をすると家計口座が赤字になる場合は、甲乙が別途協議して家計口座への送金額を定めるものとします。
(1)5万円
(2)甲と乙が都度合意した金額

5 プール金については、甲乙の共有財産ではありますが、プール金が保管されている給与等振込口座の名義人が原則として、自由に使える財産とします。

(注)ネットバンクのID・パスワードの夫婦による共有については、銀行の約款上禁止されている場合は、家計口座のネットバンクは各自が設定する等の対応をしてください。

家事・育児の負担

家事の分担をどうするか(買い物、料理、掃除、洗濯、子供の面倒・しつけ等)(平日、休日)

第●条(仕事)
1 甲と乙は、互いが仕事をしていることを常に認識し、相互に支え合うものとします。
2 甲と乙は、互いや家族の理解と協力のもとで自身の仕事が成り立つことを認識し、支え合えるよう努めるものとします。
3 甲と乙は、互いの仕事に対して否定的な姿勢や発言を控え、互いの仕事を尊重するものとします。

第●条(家事の分担)
1 甲と乙は、互いに思いやりの気持ちを持って家事を遂行し、お互いに協力するものとします。
2 買い物、料理、掃除、洗濯等の家事については、原則として、甲と乙が平等に負担するものとします。

子供の養育、しつけ、教育方針の決定方法

子供の行事(保護者会、学校行事等)に誰が出席するか

第●条(子の養育等の分担)
1 甲と乙は、親としての覚悟と責任を持って子育てに協力します。
2 甲と乙は、子の養育・しつけについて、最大限協力します。
3 甲と乙は、子の教育方針については、都度、話し合いを行い、話し合いにより決定するものとします。
4 甲と乙は、平日の子の養育は平等に分担します。

遺言書の作成

第●条(遺言書)
1 甲又は乙は、遺言書を作成する場合は、事前に相手方と協議して、遺言書を作成するものとする。ただし、甲と乙の間の婚姻関係が破綻している場合はこの限りではありません。

2 甲又は乙が遺言書を作成して、甲と乙の子供に相続財産を相続させる場合は、原則として、法定相続分の割合による相続をさせるものとします。

3 甲又は乙が遺言書を作成・変更した場合は、速かに相手方に写しを交付するものとする。ただし、甲と乙の間の婚姻関係が破綻している場合はこの限りではありません。

婚姻中のお互いの尊重・誓約事項

健康診断・人間ドックの受診義務の有無、相手方への結果報告の有無

第●条(健康への留意)

1 甲と乙は、ともに健康に十分留意し、健康を維持するために努めるものとします。

2 甲と乙は、家族の健康を第一に考え、食事の用意、摂取に努めるものとします。

3 甲と乙は、人間ドック、定期検診は必ず毎年行い、互いに報告し合うものとします。人間ドック、定期検診の費用は家計口座から支出するものとします。

病気になった場合、介護が必要となった場合の相手方の対応

第●条(病気、介護)
1  甲と乙は、いずれ一方が病気になった場合、病気の内容を互いに告知し、他方が一方の病気の療養に最大限協力するものとします。
2 甲と乙は、いずれか一方に介護の必要が生じたときは、他方が一方を介護することに努めるものとします。

趣味の扱い

第●条(趣味の扱い)
1 甲と乙は、互いの趣味に関し、理解するよう努めるものとします。

2 趣味のための出費は、家計口座に組入れなかった各自の収入により形成した貯金または特有財産から支出するものとします。
3 家計口座に組入れなかった各自の収入により形成した貯金から趣味のために1回あたり●万円以上の支出をする場合は、事前に相手方に相談するものとします。

宗教

第●条(宗教)

1 結婚後に、甲又は乙が、新たに特定の宗教に入信する場合は、事前に相手方に相談するものとします。

2 結婚後に特定の宗教に入信することによって、夫婦生活に多大なる影響がある場合は、原則として、相手方の十分な理解を得た上で、特定の宗教に入信するものとするものとします。相手方の十分な理解を得ずに、特定の宗教に入信した結果、夫婦生活に支障が生じた場合は、離婚原因となることについて、甲乙は相互に確認します。

夫婦生活・スキンシップ

第●条(夫婦生活/スキンシップ等)
1 甲と乙は、互いにスキンシップをとるよう努めるものとします。

2 甲と乙は、セックスレスにならないよう夫婦間の性生活を行うよう努めるものとします。ただし、本項は、相手の同意なく性行為を義務づけるものではありません。

ペット

第●条(ペット)
甲と乙は、ペットを飼育・世話するために費やす費用や時間、労力(散歩等)につき、原則として甲乙が対等の割合で分担するものとします。

第●条(ペット)

ペットを飼育・世話するために費やす費用や時間、労力(散歩等)は原則として甲が負担するものとします。ただし、甲が仕事・育児・病気その他のやむを得ない事由でペットの飼育・世話ができない場合は、乙がペットの飼育・世話を負担するものとします。

喫煙・飲酒

第●条(喫煙・飲酒)
1 甲と乙は、甲乙の自宅内で喫煙しないものとします。

2 甲と乙は、外出による飲酒については、下記の範囲に留めるように努めるものとします。
 (1)仕事以外の飲酒  :最大週2回
 (2)仕事による飲酒  :最大週3回(ただし、帰宅時間は原則として午前0時までとします。帰宅時間が午前0時を過ぎる場合は、事前に相手方に連絡するものとします)

借金・ギャンブル

第●条(借金・ギャンブル・投資)
1 甲と乙は、借金をする場合など、家計に影響を及ぼすおそれがある場合やその他特別な事情が生じた場合には、必ず互いに報告し、事前に相談するものとします。
2 甲と乙は、ギャンブル(宝くじの購入、パチンコ、競馬等)は行わないものとします。甲または乙が、共有財産から投資(株式、先物、FX、暗号資産、不動産)を行う場合は、事前に互いに協議し、同意の上で実施するものとします。

帰宅時間の連絡

第●条(連絡)
1 甲と乙は、互いに毎日の帰宅時間を連絡し合うものとします。
2 甲と乙は、相手からの連絡に対し、できる限り速やかに返信するものとします。

記念日・家族の休日

第●条(記念日・家族の時間等)
1 甲と乙は、甲及び乙の誕生日、甲乙間の子どもの誕生日等の記念日には、原則として、共に過ごすものとします。ただし、記念日当日に日程の調整ができない場合は、甲と乙で事前に協議の上、別の日に設定するものとします。
2 甲と乙は、原則として、週に1日は家族全員で共に過ごすものとします。ただし、甲又は乙の予定により日程の調整ができない場合は、甲と乙で事前に協議の上、別の日に設定するものとします。

お互いの両親との関係(親族との同居、親族の介護等)

第●条(親族との同居)
相手方の親族との同居をする場合は、甲乙が事前に誠実に協議し、合意した上で行うものとします。

別居した場合の扱い(婚姻費用等)

第●条(別居)
1 甲と乙は、お互いの仕事の都合または、甲乙の合意に基づいて円満に別居する場合があることを確認します。
2 第1項以外の事由により甲と乙が別居した場合は、別居後3年間に限り、甲は、乙に対して、金●万円を限度として、乙の婚姻費用を支払うものとします。ただし、甲と乙の別居の原因が乙の不貞行為、乙の家庭内暴力等により婚姻関係が破綻したことが明らかな場合は、甲は乙の婚姻費用を支払う責任はないものとします。
3 甲又は乙の収入の大幅な増減があった場合は、甲は、乙に対して、前項本文に基づく婚姻費用の減額請求を行うことができるものとします。この場合、甲乙は相互に収入状況を開示の上、婚姻費用の金額の増減額を協議の上で合意するものとします。

離婚時の親権・監護権、養育費、財産分与の扱い(暴力行為による離婚の場合)

改正民法が2026年5月までに施行されると、離婚後の共同親権が選択できるようになります。以下の条項は、改正民法が施行されたことを前提としたものとなっています(第4項第3号)。

第●条(暴力の禁止及び離婚時の親権の扱い)
1 甲と乙は、互いに、または、子供に対して、肉体的暴力および精神的虐待など(以下「暴力等」といいます)を行わないものとします。万一、甲又は乙の一方(以下「行為者」といいます。)が相手方(以下「被害者」)又は子供に対して暴力等を行った場合は、被害者等は子供を連れて別居することができるものとします。
2 被害者が前項に基づき別居した場合は、被害者は次の各号のいずれかの対応を講じることができるものとします。
(1)当分の間の別居
(2)協議離婚の申入れ
3 被害者等が前項第1号に基づき別居する場合は、行為者は、別居後5年間に限り、被害者に対して、家庭裁判所実務の標準算定方式に従った婚姻費用に次の各号のいずれか高い金額を加算した金額を支払うものとします。

(1)月額10万円を加算した金額

(2)標準算定方式で算定された月額の婚姻費用の上限金額に3割を加算した金額
4 被害者が行為者に対して第2項第2号に基づき協議離婚の申入れをした場合は、行為者は、次の条件での離婚(協議離婚、調停離婚、裁判離婚)に応じるものとします。
(1)慰籍料  400万円(肉体的暴力の場合)、300万円(精神的虐待の場合)
(2)財産分与 共有財産の半分
(3)親権   行為者から暴力等を振るわれた相手方の単独親権。監護権者は設定しない。
(4)養育費  標準算定方式で算定された月額の養育費の上限金額に3割を加算した金額を子が20歳又は大学を卒業するまでの間、毎月月末までに、支払う
(5)教育関係費 養育費に加えて、大学の学費を行為者が負担する

離婚時の親権・監護権、養育費、財産分与の扱い(不貞行為による離婚の場合)

第●条(暴力の禁止及び離婚時の親権の扱い)
1 甲と乙は、互いに、不貞行為を行ってはならないものとします。万一、甲又は乙の一方(以下「行為者」といいます。)が不貞を行った場合、相手方(以下「被害者」といいます)は別居することができるものとします。ただし、相手方は、行為者と協議をすることなく、子供と一緒に別居することはできないものとします。
2 被害者が前項に基づき別居した場合は、被害者等は次の各号のいずれかの対応を講じることができるものとします。
(1)当分の間の別居
(2)協議離婚の申入れ
3 被害者等が前項第1号に基づき別居する場合は、行為者は、別居後3年間に限り、被害者に対して、家庭裁判所実務の標準算定方式に従った婚姻費用に次の各号のいずれか高い金額を加算した金額を支払うものとします。

(1)月額5万円を加算した金額

(2)標準算定方式で算定された月額の婚姻費用の上限金額に15%を加算した金額
4 被害者等が行為者に対して第2項第2号に基づき協議離婚の申入れをした場合は、行為者は、次の条件での離婚(協議離婚、調停離婚、裁判離婚)に応じるものとします。
(1)慰籍料  250万円
(2)財産分与 共有財産の半分
(3)親権   共同親権
(4)養育費  標準算定方式で算定された月額の養育費の上限金額に15%を加算した金額を子が20歳又は大学を卒業するまでの間、毎月月末までに、支払う
(5)教育関係費 養育費に加えて、大学の学費を行為者が負担する

分離条項

分離条項(分離可能性条項)とは、契約内容の一部が無効となった場合、無効となった部分だけを切り離し、契約自体は有効とする旨の定めをいいます。婚前契約・婚後契約において、アグレッシブな条項を設定した場合、当該条項が無効と判断されてしまった場合に、契約全体が無効と主張されないようにするための規定が分離条項です。

第●条(分離条項)
  本契約のいずれかの条項又は条項の一部が、裁判所その他の機関により無効又は執行不能と判断された場合であっても、本契約の残りの条項及び当該条項の一部が無効又は執行不能と判断された条項の残存部分の有効性は一切影響を受けないものとします。

婚前契約書のひな型(テンプレート書式)

一般の方を対象にした婚前契約書のひな型(テンプレート書式)です。

婚前契約のイメージが持てない方への参考資料という趣旨です。

作り込んだものではないので、お二人の実情に応じた内容にカスタマイズしてください。裁判になると無効になるリスクがある条項もありますので、法的有効性を吟味する必要がある場合は、専門家に必ず相談してください。

婚前契約・婚後契約を公正証書にするメリット・デメリット

まず、大前提ですが、婚前契約書・婚後契約書を公正証書化しなければ、婚前契約書・婚後契約書が法的に有効なものとならないというものではありません。当事者間で、婚前契約書・婚後契約書を締結すれば、法的に有効な文書(私文書)となります(ただし、内容によっては、無効になる条項もあります)。

婚前契約書・婚後契約書を公正証書にするメリット

婚前契約書・婚後契約書を公正証書にするメリットは、公証役場において、公証人の前で、契約の内容を確認した上で(通常、公証人が内容を読み上げて確認します)署名をすることで、権威性が高まり、婚前契約・婚後契約を守ろうという意識が高くなることがあります。

また、公正証書化する際は、公証人の前で内容を確認することになりますので、「契約内容を確認しないで署名した」という主張をされづらくなるという事実上の効果も期待できます。

婚前契約書・今後契約書を公正証書化することで、公正証書の原本が公証役場に保存されることになります。ですので、公正証書作成時に交付された正本を紛失したとしても、公証役場に、公正証書の正本・謄本の交付を求めることができます(実費負担あり)。

また、婚前契約書において金銭の支払いに関する条項がある場合、公正証書に強制執行認諾文言を付してもらえると、違反した場合には、訴訟をすることなく、いきなり強制執行をすることができるというメリットがあります。

婚前契約書・婚後契約書を公正証書にするデメリット

婚前契約書・婚後契約書を公正証書にする場合は、公証人によるチェックが入ります。そうなると、婚前契約・婚後契約の自由度が下がるというデメリットがあります。

公証人にもよりますが、法的に確実に有効であると断言できない条項について公正証書に盛り込むことを拒まれる場合や、そもそも将来の仮定的な事実を前提にした金銭支払い条項(例えば、浮気をしたら100万円支払う)について強制執行認諾文言を付すことに消極的な公証人も少なくないと思われます。

また、法的な効力は、(語弊を恐れずに、ざっくりいえば)婚前契約・婚後契約を締結した場合と、公正証書にした場合とでは、原則として変わりません。

例外は、金銭給付を伴う条項について強制執行認諾文言がついた場合です。ただ、上記のとおり、婚前契約・婚後契約で公証人が強制執行認諾文言を付すことを認めてくれる条項は多くはないかと思われます。繰り返しになりますが、公証人次第ではあります。

婚前契約書・婚後契約書を公正証書化すべきか(私論)

突き詰めれば、以上のとおり、婚前契約書・婚後契約書を公正証書にすることについては、権威性が高まるという点についてメリットが高いと考えるのかどうかという点につきるかと考えます。

あとは、紛失した場合のリスクを考慮するのであれば、紛失した場合でも、公証役場に対して公正証書の正本・謄本の交付請求ができるというメリットは大きいかもしれません。

婚前契約書・婚後契約書を、一方当事者に有利なアグレッシブな内容で作り込んだ場合に、その内容をそのまま公正証書化してもらえる公証人に出会えるかどうかという懸念はあります。

私は、婚前契約書・婚後契約書については、弁護士が作成に関与するのであれば、公正証書化するメリットは高くはないと考える立場です。もちろん、アグレッシブすぎない婚前契約・婚後契約であれば、公正証書化するデメリットは原則ありませんので、公正証書化することに意味はあります。

もちろん、弁護士によって異論がある論点だとは思います。

婚前契約書・婚後契約書を作成する方法の比較

婚前契約書・婚後契約書を作成する方法としては、
 ①ネット上のひな型を参考にしながら自作する場合
 ②行政書士に依頼する場合
 ③弁護士に依頼する場合
があります。

それぞれの方法を比較するとこのようになります。

弁護士に依頼する場合行政書士に依頼する場合自作する場合
費用有料。
15万円~30万円
有料。
費用を抑えられる場合があります(数万円~)
無料
作成までの時間内容がある程度決まっていれば、1週間~3週間内容がある程度決まっていれば、1ヶ月弱程度で作成できるが、経験値次第ゼロから勉強する必要があるので、数十時間以上かかる。時間をかけても、完成できる保証はない。
契約条項の作り込みの程度依頼者の相談に応じて、柔軟に契約条項を作り込むことが可能依頼者の相談に応じて契約条項を作り込むことはできるかどうかは、経験値次第ネット上のひな型にない契約条項については、作り込むことは困難
契約内容の法的安定性裁判実務の経験があるので、契約内容の法的安定性の判断ができる裁判実務の経験がないので、契約内容の法的安定性の判断ができるかは、経験値次第自作の場合、自分が作成した契約内容の法的安定性を判断することは困難

婚前契約書・婚後契約書は自由度の高い契約です。

婚前契約書・婚後契約書では、お二人の考え方や状況によって、どのような条項を定めるべきか、定めない方がいいのかが変わってきますので、個別のカスタマイズが必須です。書式を使い回すだけでは、実情に応じた婚前契約書・婚後契約書を作成することは困難です。

また、婚前契約書・婚後契約書で定めた条項でも、法的に有効かどうか、また、法的に有効だとしてもどこまでの意味を持たせることができるのかは、よく理解しておく必要があります。

ですので、婚前契約書・婚後契約書の作成を考えていらっしゃる方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

婚前契約書・婚後契約書の作成費用

婚前契約書・婚後契約書を弁護士が作成する場合の費用は、分量や複雑さにもよりますが、20条前後程度であれば、15万円~30万円程度であることが多いとされています。

当事務所では、婚前契約書・婚後契約書の作成費用は
 ①ライトプラン    11万円(税込)
 ②カスタマイズプラン 22万円~33万円(税込)
で対応させて頂いております。

 個別の特殊性が強い富裕層・資産家様、スタートアップの創業者・役員様の婚前契約・婚後契約の作成は、33万円~(税込)で対応させて頂いております。

詳しくは、こちらをお読み頂き、お問い合わせ頂けますようお願いします。

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