ハローワークに求人広告を掲載する会社様はこの記事をお読みください。
無料求人広告に関する詐欺・トラブルが全国で増えています。
当事務所だけでも、毎週数件、無料求人広告の詐欺・トラブルのご相談を受けて対応しております。
無料求人広告の詐欺・トラブルの手口は、このようなものです。
①ハローワーク等に求人広告を掲載すると、 「求人広告を無料で求人サイトに掲載しませんか。3週間(2週間)無料です。」という勧誘電話がかかってくる。
②「無料なら申し込もう」とFAXで申込書を送る
③後日、「契約が更新されたので更新後の有料の広告料を請求します」と高額(20万~40万)の広告料の請求を受ける
というものです。
本記事を読んで頂くと、
①無料求人広告のトラブル・詐欺とは何か
②何を気をつければ無料求人広告のトラブル・詐欺に遭わないのか
③無料求人広告を申し込んでしまった場合の対応方法
④弁護士に相談・依頼する場合のメリット
が分かります。
この記事を読んで頂きたい方は、下記の方となります。
- ハローワークに求人広告を出した会社様
- 「無料で求人広告を出します」という電話がかかってきた会社様
- 無料求人広告を申し込んだが、無料掲載期間中である会社様
- 無料求人広告を申し込んだら、後日、高額請求された会社様
- 自分の会社(各事業所)がどんな無料求人広告を申し込んでいるのか、把握しきれていない会社様
無料求人広告の詐欺・トラブルの手口とは
無料求人広告の詐欺・トラブルが増加しています。
詐欺的な無料求人広告を行う悪徳業者の典型的な手口には、このようなものがあります。
- ハローワークに求人広告を掲載した会社に、「無料で求人広告を出しませんか」と営業電話がかかってくる。
- とにかく「無料」を強調して、申込を勧めてくる。「無料ですので、一度お試しください」「キャンペーン中です」「今月、限定○社です」等の強い表現で勧誘する。
- ともかく契約を急がせる。申込書がFAXされてくると、電話がかかってきて、申込書の記載場所について指示をしてすぐに申込書をFAXするように急がせる。
- 勧誘の際に、無料期間(ex 3週間)終了後に自動更新され、有料となることについて説明をしないか、十分な説明はしない。
- 勧誘の際に、「無料期間満了前に更新するかどうか連絡する」と言いながら、実際には連絡してこない。更新後は、業者の担当者が「無料期間満了前に連絡した。架電履歴もある」と言い張る。
- 会社が関心を示すと、FAXで申込書が送られてくる。申込書のどこかに、無料期間終了後は自動的に有料となることの記載があるが、小さい文字で書かれていたり、わかりにくい内容になっている。
- 解約をしようとしても、解約方法が限定されていて(ex 所定の書式を使うことを指定、FAXのみ・電話不可等)、解約しづらくなっている。
- 申込書をFAXで送った後は、連絡がなくなる。無料期間終了前に連絡はこない。
- 業者は、無料期間掲載前に、解約するかどうかの確認の連絡をしたと主張するが、実際にはしていない。
- 無料期間終了前に、複数枚の販促パンフレットの最後に解約届を添付して実際に特定記録で送ってくる事案が出てきています。会社は販促チラシと誤解して、最後に添附されている解約届まで見ずに捨ててしまうことがありがちです(11/25追記)
- 解約しようとしても、なかなか応じてくれない。「利用規約に自動更新されることが書いてある」「申込書の『利用規約の内容について説明を受けました』というチェックボックスにチェックをつけてもらっている」「契約書を読まない方が悪い」と言われる。
- 業者のサイトに求人広告は掲載されるが、求人効果はない。
- 無料期間終了後に、広告料として、半年分~1年分(20万~40万)の高額な請求書が送られてくる。しつこい督促がある。
- 広告料の支払を拒否すると、減額した金額(1/2~1/3に減額。場合によっては、1/10まで減額)で和解を持ちかけてくる。
もちろん、無料求人広告の全てが、詐欺的なものではないです。ただ、上記のような「手口」に複数該当する場合は、詐欺的な無料求人広告である可能性が高くなります。
※無料求人広告の詐欺・トラブルに関する事業者様からの法律相談は、30分8000円(税別)となります。
無料求人広告の詐欺・トラブルに関する法律相談は全国対応しております。
いつ頃から、無料求人広告の詐欺・トラブルが発生しているのか
無料求人広告の詐欺・トラブルが目立ち始めたのは、2018年頃からと言われています。被害は、全国各地で発生しており、医療機関、福祉施設、介護施設、クリニック、保育園など、深刻な人手不足に悩んでいる会社が被害にあっている傾向があります。
無料求人広告の詐欺・トラブルについては、メディアも取り上げたり(NHK、読売新聞、京都新聞等)、ハローワークや弁護士会でも注意喚起が何度もされています。
求人広告掲載時のトラブルについて(無料掲載後の高額請求など)
求人広告サイト等への掲載の勧誘にご注意ください。
最近、ハローワークインターネットサービスで求人情報を提供している事業主の方へ、求人広告サイト等への掲載についての勧誘があるとの情報が寄せられています。
中には、費用は無料であると説明しながら、後日請求書が届くといった悪質なケースもあるようです。
ご利用に当たっては、費用などしっかりご確認ください。
高額の請求をされて対応にお困りなどの場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
リーフレット「求人広告掲載時のトラブルにご注意ください」[PDF:426KB]
ハローワークに加えて、求人情報を求人サイトに掲載される場合には、「求人情報提供ガイドライン適合宣言メディア」を活用しましょう。
「求人情報提供ガイドライン適合宣言メディア」は、求職者にとって「適正な情報を掲載している求人メディア」で、安心して利用できるメディアです。読者やユーザーに不利益や誤解を与えないよう、求人情報の掲載内容について配慮が望ましい事項を示した「求人情報提供ガイドライン」に適合した取り組みを行っていることを公に宣言しています。
ハローワーク
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/news/invitation_caution.html
【注意喚起】求人広告掲載時のトラブルについて
- 最終更新日:2024年06月19日
事業者のみなさま
無料で求人広告を掲載するという勧誘には注意が必要です。
後で高額な料金を請求される場合があります。厚生労働省ハローワークのホームページでも以下の注意喚起のチラシが掲載されていますのでご覧ください。
(厚生労働省 ハローワークのチラシ(PDF版))
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyuujinkoukokutoraburu.pdf
厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス
(厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/index.html
中小企業庁X(旧ツイッター)でも同様の情報発信を行っておりますので、中小企業庁Xのフォローもお願いいたします。
しかし、無料求人広告の詐欺・トラブルの手口については、世間ではあまり知られておらず、今でも、被害にあっている会社が少なくないです。
経済産業省
https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/23072/
詐欺的な無料求人広告を行う会社の数・詐欺的な求人サイトの数
詐欺的な無料求人広告を行う悪質業者は、東京を中心に数十社が全国各地で活動しています。悪質業者は、求人サイトを立ちあげて運用していますが、求人効果は全くありません。
一つの会社が複数の求人サイトを運営していることもあり、詐欺的な無料求人広告サイトも数十個単位でネット上に存在するのが現実です。
詐欺的な無料求人広告サイトに掲載されている求人広告は、無料求人広告詐欺の「被害者」の会社である可能性が高く、1サイトあたり数十社~数百社単位で被害者がいる可能性が高い状況です。
ちなみに、詐欺的な無料求人広告サイトには、形だけは申込者の求人広告が掲載されますが、SEO対策など、求職者の目に触れるような施策は実施されていません。
ですので、詐欺的な無料求人広告サイトに求人広告を掲載しても、求職者から問い合わせ等の反応があることはまずありません。
無料求人広告の詐欺・トラブルに遭わないための対策
無料求人広告の詐欺・トラブルにあわないためには、このような対策があります。
ハローワークに求人広告を掲載する段階
無料求人広告詐欺対策として、ハローワークに求人広告を掲載する際に、下記の対応ができることとなり、中小企業庁から告知がされています(2024/8/22追記)。
①求人票上に営業拒否の旨を掲載できる
②担当者の氏名等を非公開にできる
電話で勧誘があった段階
次の方法で、電話で勧誘を受けた業者が悪質業者かどうか判断できる場合があります。
相手会社名、求人サイト名、電話番号等をネットで検索する
電話で勧誘を受けた段階では、「業者名+トラブル」「業者名+詐欺」「求人サイト名+トラブル」「求人サイト名+詐欺」でインターネット(Google、X(旧Twitter))を検索してみてください。かかってきた「電話番号」で検索するのも有効です。
一定期間の活動実績のある詐欺的な求人無料広告を行っている業者の場合は、ネットで評判が見つかることが多いです。例えば、勧誘電話があった電話番号を電話帳ナビで検索してみると、詐欺業者の情報がヒットする可能性が高いです。ただし、電話帳ナビには、詐欺業者側のステマのメッセージ(いい評判の書き込み)がなされている場合もあるので、注意が必要です。
また、詐欺的な無料求人広告を行っている業者は、会社名や求人サイト名を変えていく傾向がありますので、まだ活動実績が少ない場合は、その場合は、ネットで検索しても見つからないことも多いです。
この場合は、「業者の会社名の本店所在地+詐欺」で検索して見てください。別の会社名であっても、同一の本店所在地に無料求人広告で悪評がある会社があった場合は、詐欺的な無料求人広告である可能性があります。
「業者の代表者名+詐欺」で検索する方法で何らかの情報が見つかることもあります。
「求人」「求人広告」「地名(ex東京都千代田区)」でネットで検索する
まともな求人サイトであれば、コストをかけてSEO対策をしていますので、グーグルの検索結果の1ページ目の上位に表示されるのが通常です。
逆に、グーグルの検索結果の1ページに表示されない求人サイトは、SEO対策をしておらず、単に求人サイトがあるだけで、求人サイトを通した問い合わせがあることはありません。このような求人サイトは悪質業者が運営している可能性が高くなります。
申込をした直後の段階(通常、申込後2~3週間以内)
既に無料求人広告の申込をしてしまっている段階ですが、まずは、無料求人広告の申込書と利用規約をきっちり読み込んでください。一定期間内に解約をしなければ、有料の契約に自動更新するという記載があるかどうかを、チェックしてください。
ただ、非常に分かりづらい内容になっていることがありますので、一見しても分からない場合は、弁護士に申込書や利用規約をチェックしてもらうことも検討してください。
もし、詐欺的な無料求人広告である可能性が高い場合には、解約通知を書面で送って証拠を残すという対応をとってください。
申し込みをした直後の段階で、気がつくことができれば、有料広告期間への移行を拒否する通知を送れば被害を回避することができます。これができれば、最善です。
無料期間中の解約については、気がついたら「直ちに」行ってください。解約日の証拠が残る配達証明付内容証明郵便で送ることが望ましいです。
有料契約期間に移行した段階(通常、申込後2~3週間経過後)
この場合にやるべきことは、「無料求人広告のトラブル・被害にあった場合にやるべきこと」をご覧になってください。
※無料求人広告トラブルに関する事業者様からの法律相談は、30分8000円(税別)となります。
無料求人広告トラブルに関する法律相談は全国対応しております。
どうして無料求人広告の詐欺・トラブルがなくならないのか
無料求人広告の詐欺・トラブルがなくならない最大の理由は、無料求人広告の詐欺・トラブルの手口が、世間ではあまり認知されていない、ということがあると思われます。
また、無料求人広告の詐欺・トラブルの被害のターゲットにされやすい中小企業様では、このような課題があることが少なくありません。
- 法務担当者がおらず、契約内容を十分に確認できていない
- コスト削減に関心が集中して、「無料」という勧誘の言葉に釣られて、申込書を読まずにFAXしてしまいがち
- 無料掲載期間終了前に連絡があるという悪徳業者の「説明」を鵜呑みにしてしまって騙される(性善説)
また、無料求人広告の詐欺・トラブルにあってしまった場合でも、
- 申込書や利用規約には、小さい字ではあるとしても、「無料期間終了後は有料期間に自動的に移行する」「有料期間は6ヶ月間で広告料は○○万円」という記載がある。
- 申込書をFAXしてしまっているので、申込書や利用規約をきちんと読んでいなかったということで、見落とした自分(担当者)にも落ち度があるという気持ちが生まれてしまい、広告料の支払を拒みにくい。
- 無料求人広告の業者の担当者から、強く催促を受けて、精神的に参ってきてしまう。金額も20万~40万円程度なので、「この金額を払ってしまえば、この圧力からすぐに開放される。高い勉強代だが仕方がない」という気持ちになってしまう。
- 弁護士に相談するという発想が思いつかない。
- 警察に相談しても、相手にしてもらえなかった。
といった事情があるために、被害にあった会社が「勉強代」として、「広告料」を払ってしまうことが少なくないようです。会社様によっては、申込書をFAXしてしまったご担当者(例えば、総務課の社員や、所長)が会社に迷惑をかけられないとして、自腹で払ってしまうこともあるようです。
その結果、悪徳な商法で「利益」をあげることができるため、詐欺的な無料求人広告に新規「参入」する悪徳業者が止まらない、といったこともあるかもしれません。
さらには、詐欺的な無料求人広告を申し込むのは(小規模事業者であっても)会社ですので、消費者保護法(ex 消費者契約法、特定商取引法)の保護が受けられない(例えば、消費者と違って、事業者にはクーリングオフをする権利はない)ことも、対応の難しさの一因となっていると考えられます。
無料求人広告の詐欺・トラブルにあって「広告料」を払うとどうなるのか
無料求人広告の詐欺・トラブルにあった場合に「広告料」を払うと、こんなことが起こってしまいます。
- 一度支払った広告料を後で取り戻すことは、事実上困難です。
- 詐欺的な無料求人広告を行う業者が、支払った「広告料」を資金源にして、次の被害を生み出します。
- (あくまでも仮説にはなりますが)詐欺にあってもお金を支払った会社として「名簿」が作られ、ややこしい人たちに「転売」されて、次の詐欺のターゲットになってしまう。
無料求人広告の詐欺・トラブルの被害にあった場合にやるべきこと
詐欺的な無料求人広告業者からの請求を無視しない
無料求人広告の詐欺業者からの請求を無視することは絶対にNGです。
請求を放置すると、利用規約上の「自動更新」を主張され、請求される広告料がどんどん高額となっていってしまうからです。また、詐欺的な無料求人広告会社からの「追い込み」もどんどんきつくなってきます。
無料求人広告に関する契約については、支払拒絶、契約不成立、契約の詐欺・錯誤取消し、公序良俗違反、更新拒絶を書面(可能な限り内容証明)で通知する必要があります。
絶対に「広告料」を支払わない
無料求人広告の詐欺・トラブルにあった、詐欺に遭ったかもしれないと思ったときは、「広告料」を絶対に支払わないでください。
もちろん、無料求人広告であっても「真っ当な」業者もあります。
今回、申し込んだ無料求人広告の勧誘の仕方が、「真っ当な」ものか、「詐欺的」なのかについて判断に迷う場合は、弁護士等の専門家に相談して、判断してもらうまでは、「広告料」の支払は止めてください。
「広告料」を一度支払ってしまうと、「詐欺的な無料求人広告」であったとしても、取り戻すことは事実上不可能になってしまうからです。
「広告料」の支払義務がないことを明確に伝える
無料求人広告の詐欺・トラブルにあった場合は、まず、「広告料」の支払義務がないことを明確に伝えることが大前提です。少しでも、支払う意思を示してしまうと、無料求人広告の詐欺業者は、圧をかけて追い込んでくるからです。
また、請求を「放置」することもNGです。
もちろん、「広告料の支払義務がない」ということを伝えても、無料求人広告の詐欺業者は、(おそらく督促&受け答えのマニュアルを事前に作るなどして)手慣れていますので、「反論」をしたり、強く言ってくることが通常です。
例えば、「申込書には、無料期間終了後に有料になることは書いてある」「払わなければ裁判をすることになる」等と、圧をかけてくることが通常ですので、一筋縄ではいかないです。
また、「訴訟になると時間もお金もかかるので、減額した金額(1/2~1/3に減額。事案によっては1/10程度まで減額)で和解してあげてもいいですよ」と言ってきて、ゆさぶってくることも少なくありません。
「広告料」の支払義務がないことを書面で送る
「広告料の支払義務がない」ことを、電話で伝えても、詐欺的な無料求人広告を行う業者が納得することは、まず、ありません。また、口頭のやりとりだけでは、証拠が残りません。
ですので、「広告料」の支払義務がないことを書面で送ることが重要です。
どういう内容の書面を送ればいいのかについては、法的な知識が必要となりますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に依頼して、弁護士名義で「広告料」の支払義務がない通知書を送る
無料求人広告の詐欺・トラブルにあった場合は、まず、「広告料」の支払義務がないことを明確に伝えることが重要であると説明しましたが、「明確に伝えること」についても、レベル感があります。
レベル感のイメージとしては、
弁護士名義の書面を送る >> (本人名義の)書面を送る >> 口頭で伝える
というものです。
ここからは、あくまでも仮説にはなりますが、無料求人広告の詐欺業者は、「とりやすいところからとる」という行動原理で動いている可能性があります。無料求人広告の詐欺業者は、「支払わない」ことを明確に伝えている会社よりも、「支払うかどうか迷っている」会社に対して、督促の優先度合いを上げる、という判断をする可能性があります。
もちろん、無料求人広告の詐欺業者がどんな行動原理で動いているのかは、外部から知ることはできません。
しかし、一般論としては「とりやすいところからとる」という行動原理で動いているという仮説は、ある程度はあてはまるのではないかと思います。
そうなると、「広告料」の支払義務がないことについて、弁護士名義で書面を送ると、無料求人広告の詐欺を行っている会社からすると、そういった会社から「広告料」を回収することは、手間がかかります。そうなると、「手間がかかる会社」と「手間がそれほどはかからない会社」のどちらに、(有限の)督促のリソースを割くのかという話になる可能性があります。
無料求人広告の詐欺業者が、合理的に行動するのかは分かりません。ただ、「広告料」の支払義務がないこと明確に伝えていない会社よりも、「広告料」の支払義務がないことを明確に伝え、かつ、弁護士からの書面も来ている会社の方を「後回し」にする(またはあきらめて、次のターゲットに行く)可能性は、一定程度あるかと思われます。
※無料求人広告の詐欺・トラブルに関する事業者様からの法律相談は、30分8000円(税別)となります。
無料求人広告の詐欺・トラブルに関する法律相談は全国対応しております。
無料求人広告の詐欺業者に送付する書面の内容
無料求人広告の詐欺業者に対して、「広告料」の支払義務がないことを書面で送付する場合の「理屈(=法的根拠、法律構成)」としては、一般論としては、下記のような理屈があります。
もちろん、個別の事実関係によって、あてはまる理屈、あてはまらない理屈がありますので、被害に遭った際の具体的な事案でどのような理屈を主張すべきかについては、弁護士に相談してください。
契約不成立
無料での求人広告掲載を申し込んだが、自動更新された後は有料広告になることについて申し込む意思はなかった、ということで、契約が不成立であるという法律構成(主張)です。
錯誤取消し(民法第95条1項)
求人広告の掲載が無料であると誤信して、申し込んだので、錯誤取消しをするという法律構成(主張)です。
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
詐欺取消し(民法第96条1項)
無料で求人広告を掲載できることだけを強調され、一定期間が経過した後の自動更新や自動更新後に有料になることについて説明を受けなかった結果(不作為の欺罔行為)、有料になることはないと誤信して契約をした場合に、民法上の詐欺に該当するので、詐欺取消しをするという法律構成(主張)です。
詐欺取消しを認めた裁判例があります。詐欺取消しを主張する場合は、下記の裁判例を引用して、説得力を上げましょう。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
■那覇簡易裁判所の裁判例(判決):
那覇簡易裁判所 令和3年10月21日(令和2年(ハ)第1487号広告費等請求事件)
裁判所は、有料の広告掲載契約は成立しているとしつつ、下記の通り原告の詐欺を認定して、取り消しを認めた。
「原告の勧誘担当者は、被告代表者に対し、電話口で本件求人広告掲載の利用料は無料であることのみを強調し、無料掲載期間終了後は解約手続きを事前に取らない限り、自動的に有料契約に移行するとの契約ルールについては何ら説明をしなかった。」、「平成31年4月から令和元年11月25日にかけて厚生労働省や全国求人情報協会、毎日新聞等のマスコミ及び沖縄県弁護士会を含む各県の弁護士会が原告らの勧誘手法が事業者の錯誤に付け込んだ商法である旨の注意喚起を大々的に行っていた事実が認められる(原告勧誘担当者が被告代表者に無料求人広告掲載の勧誘電話をかけてきたのは令和元年11月20日)。…原告においても当然自身の行っている勧誘手法に指摘されている問題があることは十分に認識していたと認められ、…勧誘によって被告代表者を錯誤に陥らせようとする故意があったこと、…被告代表者の錯誤によって契約申込みをさせようとする故意があったと認められる。」「被告代表者は本件広告掲載契約日までに原告勧誘担当者から3度も勧誘電話を受け、その都度広告掲載料金は「無料」と強調されていたこと、そして、勧誘担当者に無料であることを確認して本件広告掲載契約の申し込みをしたと述べる。…自動更新や有料契約に自動移行することについて意識が向かないように誘導された結果、電話勧誘を受けた被告代表者は、…無料期間が終了する4日以上前までに書面で更新拒否を通知しなければ自動更新となり、有料契約に自動移行されてしまうという契約であることを全く理解していなかった。原告は、被告代表者の錯誤をその不作為によって深めて本件契約の申込みをさせたといえる。」
津簡易裁判所 令和5年11月7日
公序良俗違反(民法第90条)
詐欺的な求人広告契約が、公序良俗違反(民法90条)として無効であるという法律構成(主張)です。
詐欺的な求人広告の契約が、公序良俗違反(民法第90条)であり、無効であると判断した裁判例があります。
公序良俗違反を主張する場合は、下記の裁判例を引用して説得力を上げましょう。
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
■東京地方裁判所の裁判例(判決)
:東京地裁令和元年9月9日平成31年(ワ)第4528号
「本件サービスは,3週間の無料掲載期間を1日でも経過すれば,直ちに1年分の広告料の支払義務が発生する仕組みになっているにもかかわらず,原告から被告に対して,事前に有料掲載期間に移行するか否かの意思確認を行う仕組みにはなっていない。原告は,挨拶状によって注意喚起を行っていると主張するが,挨拶状が被告に到達したのは,無料掲載期間の最終日の午後であるから,真に注意喚起の趣旨で挨拶状を送付しているとは認められず,単に注意喚起をした体裁を整えようとしているにすぎない。」
「原告は,無料掲載期間が経過するや否や,直ちに請求書を被告に送付して1年分の広告料の支払を請求し,被告が抗議をしても本件規約を盾に解約に応じず,訴訟提起に至っているところ,原告が,東京地方裁判所に,求人情報サービスの利用代金の支払を求める訴訟を多数提起していることは当裁判所に顕著な事実である。また,証拠(乙1各枝番)によれば,すべてが本件サービスに関するものであるかは不明であるものの,本件と同様の紛争が多数発生していることが窺われる。」「被告は,本件サービスには求人広告としての実体がなく,本件の請求は詐欺に類する行為であると主張するので,当裁判所は,原告に対し,繰り返し,原告の業務内容や,本件サービスによる求人の実績について明らかにするよう求めたが,原告は,この点について何ら主張立証を行わなかった。したがって,本件サービスには求人広告としての実体はないものと評価せざるを得ない。」
「以上を総合すると,原告は,専ら無料掲載期間内に解約しなかった顧客(この中には,本件規約を読んで,無料掲載期間内に解約手続が必要であることを認識したが手続を失念した者のほか,被告のように,そもそも本件規約を読んでおらず,解約手続が必要であることを認識していないかった者も含まれる。)に,1年分の広告料を支払わせることのみを目的として,本件契約を締結しているものといわざるを得ないから,本件契約は,公序良俗に反し無効である。」
債務不履行解除
無料求人広告詐欺で用いられる求人サイトに求人情報を掲載しても、問い合わせは全くないことが通常です。求人情報を掲載した意味がないことが、債務不履行であるとして、契約の解除を主張することができます。
求人広告掲載中止要求
「広告料」の支払義務がないことを伝えるのと同時に、求人広告掲載中止要求を書面で求めるべきです。
職業安定法違反の主張
詐欺的な無料求人広告を行う事業者が、職業安定法に違反している場合があります。
例えば、令和4年職業安定法の改正により、「事業者が求人企業から依頼を受けて求人情報を提供する行為」だけではなく、「インターネット上の公開情報を収集する(クローリング)など、特段の依頼なく収集した情報を提供するもの」についても、「募集情報等提供」とされています(職業安定法第4条)。
募集情報等提供事業を行う者は、求人情報について的確表示義務を負っています。
具体的には、①求人等に関する情報について、正確かつ最新の内容に保つための措置を講じること、及び、②求人等に関する情報について、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないことが、職業安定法第5条の4により義務づけられています。
令和4年職業安定法の改正の概要について~求人メディア等のマッチング機能の質の向上~
「求人等に関する情報の的確表示募集情報等提供事業者が書面、インターネット等の広告等により提供する求人等に関する情報報、求職者情報、求人企業に関する情報、自社に関する情報、事業の実績に関する情報)について、①正確かつ最新の内容に保つための措置を講じること、②虚偽の表示・誤解を生じさせる表示をしてはならなことを義務付け。求人企業(労働者の募集を行う者)にも同様の義務づけ。」
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000992910.pdf
改正職業安定法2022(令和4)年10月1日施行 募集情報等提供事業の運営ルールが変わります
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000983825.pdf
(求人等に関する情報の的確な表示)
第五条の四 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、この法律に基づく業務に関して新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(以下この条において「広告等」という。)により求人若しくは労働者の募集に関する情報又は求職者若しくは労働者になろうとする者に関する情報その他厚生労働省令で定める情報(第三項において「求人等に関する情報」という。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。
② 労働者の募集を行う者及び募集受託者は、この法律に基づく業務に関して広告等により労働者の募集に関する情報その他厚生労働省令で定める情報を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければならない。
③ 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、この法律に基づく業務に関して広告等により求人等に関する情報を提供するときは、厚生労働省令で定めるところにより正確かつ最新の内容に保つための措置を講じなければならない。
職業安定法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000141_20221001_504AC0000000012
詐欺的な無料求人広告を行う事業者が運営する求人サイトが、的確表示義務に違反した求人広告をしている場合には、職業安定法違反の求人広告をしている場合がありますので、広告契約の債務の本旨に従った履行をしていないとして、債務不履行解除の主張ができる可能性があります。
もちろん、詐欺的な無料求人広告を行う事業者が行っている求人広告が、職業安定法に実際に違反しているかどうかは、ケースバイケースとなりますので、弁護士に相談してください。
無料求人広告の詐欺業者に対する書面の送付方法
無料求人広告の詐欺業者に対する書面の送付方法ですが、最も望ましいのは、①内容証明郵便(配達証明付)で送付することです。
①内容証明郵便(配達証明付)で送付すれば、後日、業者が「受け取っていない」と言い張っても、郵便局が、「配達した文書の内容」と「配達日」を証明してくれるので、裁判でも使える「証拠」となるからです。
しかし、最近の無料求人広告の詐欺業者は、「対策」として、内容証明郵便を受け取らないという対応をすることがあります。内容証明郵便は書留郵便扱いですので、郵便局員の方が内容証明を持ってきた場合に、「受領拒否」されてしまうことがあります。
その場合には、無料求人広告の詐欺業者に対する書面の送付方法を②レターパックライトにするという対応があります。
②レターパックライトは、書留扱いではないので、郵便ポストに入ります。また、追跡サービスで郵便ポストに入った日時を証拠にできますので、簡易的な証拠として使えます。
ただ、最近の詐欺的な無料広告の業者は、レンタルオフィスに入居していることが多く、レターパックライトですら「受領拒否」する業者もいたりします。どういう方法で、郵便ポストへの投函を「拒否」しているのかは、不明ですが、レターパックライトですら「受領拒否」されることも、ちらほらあります。
その場合は、無料求人広告の詐欺業者に対する書面の送付方法を③FAX(FAX送信履歴あり)にするという対応があります。
ただ、③FAXの場合は、FAX送信履歴(送った文書の1枚目と送信日時が記載)を印刷できる複合機でないと、証拠としては使いづらいという限界があります。
証拠を確実に残す場合は、①内容証明郵便(配達証明付)、②レターパック、③FAX(FAX送信履歴あり)という3つの方法を同時に行うという対応も検討してみてください。

無料求人広告詐欺業者の「手口」は「進化」している【2024/12/16追記】
この記事を公開した後、無料求人広告詐欺の被害にあった事業者様からご相談を頂くことがかなり増えました。
被害にあった事業者の方から事実関係を伺うと、無料求人広告詐欺業者の「手口」は、この1年間で、かなり「進化」しています。悪用防止の為「進化」の内容を書くことはできませんが、ろくでもないことには間違いありません。
事業者の方にとっては、勧誘された無料求人広告が詐欺なのか、真っ当なものなのか、なかなか判断がつきにくくなっている状況かと思います。
事業者にとっては、無料求人広告を申し込む際には、
①無料求人広告は原則申し込まない
②それでも無料求人広告を申し込む場合は、必ず更新拒絶の通知を送る(真っ当な無料求人広告であることが後で確認がとれたら、更新拒絶した後に、再度申し込めばよい)
という対応が必要なのかもしれません。
無料求人広告のトラブル・詐欺にあった場合に、弁護士に相談・依頼するメリット
無料求人広告のトラブル・詐欺にあった場合に、弁護士に相談するメリットは、下記のとおりです。
- 申し込んだ無料求人広告が「真っ当」なものか、「詐欺的」なものかについて「判断」してもらえる
- (無料求人広告の詐欺・トラブルに詳しい弁護士だと)申し込んだ業者について、他にも「被害」情報が出ているかどうか調べられる場合がある(ただし、調べられない場合もあります)
無料求人広告の詐欺・トラブルにあった場合に、弁護士に依頼するメリットは、下記のとおりです。
- (無料求人広告の詐欺業者に対して)弁護士名義での書面を送付してもらえる
- 詐欺的な無料求人広告を行う業者とのやりとりを代わりにやってもらえるので、精神的な負担が軽減できる
詐欺的な無料求人広告に申し込んでしまったと感じた場合は、支払を拒否するか、または、弁護士に相談して、申し込んだ無料求人広告が詐欺的なものであるかどうかを判断してもらい、対応のアドバイスを受けることを、おすすめします。
当事務所では、無料求人広告のトラブル・詐欺のご相談を承っております
当事務所では、無料求人広告トラブル・詐欺の対応実績が多数あります。
無料求人広告と思って申し込んだら、高額請求をされてしまった会社様は、ご相談頂ければと思います。
無料求人広告の詐欺・トラブルのご相談については、全国対応(電話・ZOOM等)しております。
法律相談は有料となります。
※無料求人広告の詐欺・トラブルに関する事業者様からの法律相談は、30分8000円(税別)となります。
無料求人広告の詐欺・トラブルに関する法律相談は全国対応しております。
